Storage
カテゴリ概要
Azure のストレージサービスは、オブジェクト・ブロック・ファイルの各ストレージに加え、アーカイブやデータ転送まで幅広い領域をカバーする。AWS と最も大きく異なるのは「ストレージアカウント」という上位リソースの存在であり、Blob コンテナ・File 共有・Queue・Table がすべてこのストレージアカウントの配下に配置される。AWS では S3、EBS、EFS、Glacier などが独立したサービスとして存在するが、Azure ではストレージアカウントを軸に複数のストレージ機能が統合されている。
サービスマッピング一覧
| 機能 | AWS サービス | Azure サービス | 主な違い |
|---|---|---|---|
| オブジェクトストレージ | S3 | Blob Storage | バケット → コンテナ。ストレージアカウントが上位概念として存在 |
| ブロックストレージ | EBS | Managed Disks | 概念はほぼ同一。ディスクタイプの名称が異なる |
| ファイルストレージ(NFS) | EFS | Azure Files(NFS) | Azure Files は NFS と SMB を 1 つのサービスで提供 |
| ファイルストレージ(SMB) | FSx for Windows File Server | Azure Files(SMB) | 同上。Azure では別サービスに分かれない |
| 高性能ファイルストレージ | FSx for Lustre | Azure Managed Lustre | HPC / AI ワークロード向け。概念はほぼ同一 |
| アーカイブストレージ | S3 Glacier / S3 Glacier Deep Archive | Blob Storage Archive tier | Azure では別サービスではなく Blob のアクセス層として管理 |
| バックアップ | AWS Backup | Azure Backup | 概念はほぼ同一。対応リソースの範囲が異なる |
| 大容量データ転送 | Snowball / Snowcone | Azure Data Box | オフラインデータ転送デバイス。概念はほぼ同一 |
| ハイブリッドストレージ | Storage Gateway | Azure File Sync | オンプレミスとクラウドのファイル同期。StorSimple は非推奨 |
主要サービス詳細
Azure Blob Storage(AWS: S3)
Azure のオブジェクトストレージサービス。非構造化データ(画像、動画、ログ、バックアップ等)を大量に格納するために使用する。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- S3 はバケットがトップレベルのリソースだが、Azure では「ストレージアカウント → Blob コンテナ → Blob」という 3 階層構造になる。ストレージアカウントは課金・アクセス制御・冗長性設定の単位でもある
- S3 のバケット名はグローバルに一意だが、Blob コンテナ名はストレージアカウント内で一意であればよい。代わりにストレージアカウント名がグローバルに一意である必要がある
- S3 のストレージクラス(Standard / Intelligent-Tiering / Glacier 等)に対応するのが、Azure のアクセス層(Hot / Cool / Cold / Archive)。Blob 単位でアクセス層を変更でき、Lifecycle Management ポリシーで自動移行も可能
- S3 のバージョニングに相当する機能として Blob のバージョニングがあり、ストレージアカウント単位で有効化する
- アクセス制御は SAS(Shared Access Signature)トークン、ストレージアカウントキー、Microsoft Entra ID + Azure RBAC の 3 方式がある。S3 のバケットポリシーに完全対応するものはないが、RBAC とストレージアカウントのファイアウォールルールで同等の制御が可能
Azure Managed Disks(AWS: EBS)
Azure Virtual Machines にアタッチするブロックストレージ。概念は EBS とほぼ同一。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- EBS のボリュームタイプ(gp3 / io2 / st1 / sc1)に対応するのが、Azure のディスクタイプ(Premium SSD v2 / Premium SSD / Standard SSD / Standard HDD / Ultra Disk)
- EBS の gp3 に最も近いのが Premium SSD。高 IOPS が必要な場合は Ultra Disk または Premium SSD v2 を選択する
- EBS スナップショットと同様に、Managed Disks のスナップショットを取得できる。増分スナップショットにも対応
- 可用性ゾーン間でのディスク移動は、EBS 同様にスナップショット経由で行う
- Managed Disks は VM と独立したリソースとして管理され、VM を削除してもディスクを残すことが可能(EBS と同じ概念)
Azure Files(AWS: EFS / FSx for Windows File Server)
フルマネージドのファイル共有サービス。NFS と SMB の両プロトコルをサポートする。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- AWS では NFS ファイル共有は EFS、SMB ファイル共有は FSx for Windows File Server と別サービスに分かれるが、Azure Files は 1 つのサービスで両方をサポートする
- NFS 共有は Premium tier のみで利用可能。SMB 共有は Standard tier と Premium tier の両方で利用可能
- EFS のようなサーバーレス自動スケーリングではなく、プロビジョニングした容量に対して課金される(Standard tier は使用量課金も選択可能)
- Active Directory 統合による認証が可能で、オンプレミス AD または Microsoft Entra Domain Services と連携できる
- Azure File Sync を使うことで、オンプレミスの Windows Server とクラウドの Azure Files を同期できる(AWS Storage Gateway に近い概念)
Azure Managed Lustre(AWS: FSx for Lustre)
HPC(High Performance Computing)や AI / ML ワークロード向けの高性能並列ファイルシステム。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- FSx for Lustre と同様に、大規模な並列読み書きが必要なワークロードに適している
- Blob Storage との統合が可能で、データを Blob から Managed Lustre にインポートして高速処理し、結果を Blob にエクスポートできる(FSx for Lustre の S3 連携と同じ概念)
- FSx for Lustre に比べると後発のサービスであり、対応リージョンや機能面でまだ差がある
Blob Storage Archive tier(AWS: S3 Glacier / S3 Glacier Deep Archive)
Blob Storage のアクセス層の 1 つで、長期保存・ほぼアクセスしないデータ向け。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- S3 Glacier は独立したサービス(別の API 体系)だが、Azure の Archive は Blob Storage のアクセス層の 1 つであり、同じ API で操作できる
- Archive 層の Blob にアクセスするには、まず Hot / Cool / Cold のいずれかの層に「リハイドレート(復元)」する必要がある。S3 Glacier の復元リクエストに相当する
- リハイドレートの優先度を Standard(最大 15 時間)または High(1 時間以内)から選択できる。S3 Glacier の Expedited / Standard / Bulk に対応する概念
- Lifecycle Management ポリシーで Hot → Cool → Cold → Archive への自動移行を設定できる。S3 Lifecycle Policy と同じ考え方
Azure Backup(AWS: AWS Backup)
Azure リソースの一元的なバックアップ管理サービス。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- AWS Backup と同様に、VM、Managed Disks、Azure Files、SQL Database、Blob Storage などの複数リソースを一元管理できる
- Recovery Services コンテナ(またはバックアップコンテナ)にバックアップデータを格納する。AWS Backup のバックアップボールトに相当
- バックアップポリシーで保持期間やスケジュールを定義する点は同じ
Azure Data Box(AWS: Snowball / Snowcone)
大容量データをオフラインで Azure に転送するための物理デバイス。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- Snowball に相当する Data Box(最大 80 TB)、より大容量の Data Box Heavy(最大 1 PB)、小型の Data Box Disk(最大 40 TB / SSD)がある
- AWS Snowcone のような超小型デバイスに直接対応するものはない
- データのエクスポート(Azure → オンプレミス)にも対応している
Azure File Sync(AWS: Storage Gateway に近い)
オンプレミスの Windows Server と Azure Files 間でファイルを同期するサービス。
AWS エンジニアが知っておくべき違い:
- Storage Gateway のファイルゲートウェイに概念が近いが、Azure File Sync は双方向同期を基本とする
- クラウド階層化機能により、アクセス頻度の低いファイルを自動的に Azure Files にオフロードし、オンプレミスのストレージ容量を節約できる
- 複数の Windows Server を同一の Azure Files 共有に同期できるため、マルチサイトのファイルサーバー統合に適している
- 旧 Azure StorSimple は非推奨となり、Azure File Sync への移行が推奨されている
AWS との主要な違い
ストレージアカウントという上位リソース
Azure ストレージの最も特徴的な概念が「ストレージアカウント」である。AWS では S3 バケット、EBS ボリュームなどがそれぞれ独立したリソースだが、Azure ではストレージアカウントの配下に Blob コンテナ、File 共有、Queue、Table が配置される。ストレージアカウント単位で以下が決まる:
- 冗長性: LRS(ローカル冗長)/ ZRS(ゾーン冗長)/ GRS(地理冗長)/ GZRS(地理ゾーン冗長)
- パフォーマンス tier: Standard(HDD)/ Premium(SSD)
- アクセス制御: ストレージアカウントキー、SAS トークン、ネットワーク制限
- 課金単位: ストレージアカウント配下のすべてのサービスが一括管理
AWS では S3 バケットごとにバージョニングやライフサイクルを独立設定するが、Azure ではストレージアカウントレベルの設定がその配下のリソースに影響する点に注意が必要。
アクセス層モデル vs 独立サービスモデル
AWS では S3 Standard / S3 Glacier / S3 Glacier Deep Archive がそれぞれ異なるストレージクラス(Glacier は歴史的に独立サービスでもある)として存在する。Azure では Hot / Cool / Cold / Archive の 4 つのアクセス層が Blob Storage の機能として統合されている。層の変更は Blob 単位で行え、API も共通であるため、運用がシンプルになる。
ファイルストレージの統合
AWS では NFS ファイル共有(EFS)と SMB ファイル共有(FSx for Windows File Server)が別サービスとして提供されるが、Azure Files は 1 つのサービスで NFS と SMB の両方をサポートする。プロトコルの選択はファイル共有作成時に決定し、同一ストレージアカウント内に NFS 共有と SMB 共有を混在させることも可能。
冗長性の考え方
AWS の S3 はデフォルトで 3 AZ にデータを複製するが、Azure のストレージアカウントでは冗長性レベルを明示的に選択する必要がある。LRS(単一データセンター内 3 コピー)が最も安価だが、AZ 障害に対する耐性がない。本番ワークロードでは ZRS(3 AZ に分散)以上を選択すべき。
サービス選定の指針
| ユースケース | AWS での選択肢 | Azure での選択肢 |
|---|---|---|
| Web アプリの静的アセット・画像 | S3 + CloudFront | Blob Storage + Azure CDN / Front Door |
| アプリケーションログの長期保存 | S3(Intelligent-Tiering or Glacier) | Blob Storage(Cool → Archive のライフサイクル) |
| VM のディスク | EBS(gp3 / io2) | Managed Disks(Premium SSD / Ultra Disk) |
| Linux サーバー間のファイル共有 | EFS | Azure Files(NFS プロトコル) |
| Windows サーバーのファイルサーバー | FSx for Windows File Server | Azure Files(SMB プロトコル) |
| HPC / AI 向け高性能ファイルシステム | FSx for Lustre | Azure Managed Lustre |
| 数年〜数十年のアーカイブデータ | S3 Glacier Deep Archive | Blob Storage Archive tier |
| オンプレミスからの大容量データ移行 | Snowball / Snowcone | Data Box / Data Box Heavy |
| オンプレミスとクラウドのファイル同期 | Storage Gateway(File Gateway) | Azure File Sync |
| VM やデータの一元バックアップ | AWS Backup | Azure Backup |