ネットワークの基礎

作成: 2026.03.24更新: 2026.03.24

ネットワークの基礎とは

ネットワークとは、コンピュータ同士がデータを送受信するための仕組みである。インターネットや社内 LAN など、現代のシステムはすべてネットワークを介して通信を行っている。SIer の業務システムでは、ブラウザからサーバーへの通信、サーバー間の通信、外部システムとの連携など、あらゆる場面でネットワークの知識が必要となる。

なぜ SIer で重要か

SIer が構築する業務システムは、複数のサーバーが連携して動作する分散システムであることがほとんどである。Web サーバー・AP サーバー・DB サーバー間の通信、外部 API との連携、ファイアウォールによるアクセス制御など、ネットワーク構成を理解しなければシステム全体の動きが把握できない。

開発者であっても、「なぜこの通信がタイムアウトするのか」「なぜこのサーバーに接続できないのか」といったトラブルに遭遇する場面は多い。ネットワークの基礎を理解していれば、原因の切り分けが格段に早くなる。

基本概念

OSI 参照モデルと TCP/IP

ネットワーク通信は、複数の「層(レイヤー)」に分けて設計されている。OSI 参照モデルは 7 層、TCP/IP モデルは 4 層で構成される。SIer の現場では TCP/IP モデルをベースに理解しておけば十分である。

OSI 参照モデル         TCP/IP モデル
┌──────────────┐
│ 7. アプリケーション層│    ┌──────────────┐
│ 6. プレゼンテーション層│   │ アプリケーション層 │  HTTP, DNS, SMTP
│ 5. セッション層    │    └───────┬──────┘
├──────────────┤              │
│ 4. トランスポート層  │    ┌───────┴──────┐
├──────────────┤    │ トランスポート層  │  TCP, UDP
│ 3. ネットワーク層   │    ├──────────────┤
├──────────────┤    │ インターネット層  │  IP
│ 2. データリンク層   │    ├──────────────┤
│ 1. 物理層       │    │ ネットワーク     │  Ethernet
└──────────────┘    │ インターフェース層 │
                      └──────────────┘

IP アドレスとサブネット

IP アドレスは、ネットワーク上のコンピュータを識別するための番号である。IPv4 では 192.168.1.10 のようにドット区切りの 4 つの数値で表現する。

概念説明
IP アドレスネットワーク上の住所192.168.1.10
サブネットマスクネットワーク部とホスト部の境界を示す255.255.255.0(/24)
デフォルトゲートウェイ他のネットワークへの出口となるルーター192.168.1.1
プライベート IP社内 LAN 等で使用する内部アドレス10.x.x.x, 172.16.x.x, 192.168.x.x
グローバル IPインターネット上で一意なアドレスISP から割り当てられる

ポート番号

ポート番号は、同一コンピュータ上のどのアプリケーション宛の通信かを識別するための番号(0〜65535)である。IP アドレスが「建物の住所」なら、ポート番号は「部屋番号」に相当する。

ポート番号プロトコル用途
80HTTPWeb サーバー(暗号化なし)
443HTTPSWeb サーバー(暗号化あり)
22SSHリモートログイン
5432PostgreSQLPostgreSQL データベース
1521OracleOracle データベース
8080HTTP(代替)AP サーバー(Tomcat 等)

DNS の仕組み

DNS(Domain Name System)は、ドメイン名(例: www.example.com)を IP アドレス(例: 93.184.216.34)に変換する仕組みである。

名前解決の流れ:
ブラウザ → OS のリゾルバ → DNS サーバー → IP アドレスを返却
                              │
                              ├→ キャッシュにあればすぐ返す
                              └→ なければ上位 DNS に問い合わせ

HTTP / HTTPS の基礎

HTTP(HyperText Transfer Protocol)は、Web ブラウザと Web サーバー間の通信プロトコルである。HTTPS は HTTP に SSL/TLS による暗号化を加えたものであり、現在ではほぼすべての通信が HTTPS で行われる。

HTTP リクエスト/レスポンスの流れ:
ブラウザ  →  リクエスト(GET /index.html)  →  Web サーバー
ブラウザ  ←  レスポンス(200 OK + HTML)    ←  Web サーバー

よく使う HTTP ステータスコードは以下の通りである。

ステータスコード意味説明
200OKリクエスト成功
301Moved Permanently恒久的リダイレクト
400Bad Requestリクエストが不正
403Forbiddenアクセス権限なし
404Not Foundリソースが見つからない
500Internal Server Errorサーバー内部エラー
503Service Unavailableサービス利用不可

ファイアウォールとプロキシ

ファイアウォール は、ネットワーク間の通信を監視し、許可された通信のみを通過させるセキュリティ機能である。SIer のシステムでは、インターネットと社内ネットワークの境界、ネットワークセグメント間の境界に設置される。

プロキシ(プロキシサーバー) は、クライアントとサーバーの間に入り、通信を中継するサーバーである。社内からインターネットへのアクセス時に経由する「フォワードプロキシ」と、外部からのアクセスを内部サーバーに振り分ける「リバースプロキシ」がある。

SIer での使われ方

ネットワーク構成の理解

SIer の業務システムは、セキュリティの観点からネットワークを複数のセグメントに分離する。

インターネット
    │
 [ファイアウォール]
    │
 ┌──┴──┐
 │ DMZ  │   ← Web サーバー(外部公開用)
 └──┬──┘
 [ファイアウォール]
    │
 ┌──┴──────┐
 │ 社内 LAN   │   ← AP サーバー、DB サーバー(外部非公開)
 └─────────┘

DMZ(非武装地帯)は、インターネットと社内 LAN の間に置かれるネットワーク領域であり、外部に公開するサーバーはここに配置する。

よく使うネットワークコマンド

障害調査やネットワーク疎通確認で使用する主なコマンドは以下の通りである。

コマンド用途使用例
ping対象ホストとの疎通確認ping 192.168.1.10
traceroute対象ホストまでの経路確認traceroute www.example.com
nslookupDNS の名前解決確認nslookup www.example.com
curlHTTP リクエストの送信curl -I https://example.com
ssネットワーク接続の確認ss -tlnp

まとめ

  • ネットワーク通信は TCP/IP モデル(4 層)で理解するのが実用的である
  • IP アドレスがネットワーク上の住所、ポート番号がアプリケーションの識別番号である
  • DNS はドメイン名を IP アドレスに変換する仕組みである
  • ファイアウォールとネットワークセグメント分離により、SIer のシステムはセキュリティが確保されている
  • pingcurlnslookup 等のコマンドで疎通確認や障害調査を行える