職種

作成: 2026.03.24更新: 2026.03.24

職種とは

SIer のプロジェクトには、さまざまな専門性を持つ職種のメンバーが関わる。それぞれの職種には明確な役割分担があり、プロジェクトの規模が大きいほど分業が細かくなる傾向がある。ここでは SIer で代表的な 6 つの職種と、新入社員の典型的なキャリアパスを紹介する。

基本概念

プロジェクトマネージャー(PM)

プロジェクト全体の計画策定・進捗管理・リスク管理を担当する。顧客との窓口として、スコープ(作業範囲)・スケジュール・コスト・品質のバランスを取りながらプロジェクトを推進する。

主な業務は以下の通り。

  • プロジェクト計画書の作成
  • WBS(Work Breakdown Structure)の策定とスケジュール管理
  • 顧客との定例会議の運営、進捗報告
  • 課題・リスクの管理と対策の立案
  • メンバーのアサインと体制管理
  • 予算管理と採算管理

PM にはテクニカルスキルだけでなく、コミュニケーション能力、交渉力、リーダーシップが求められる。大規模プロジェクトでは PM の下に PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が設置され、複数人で管理業務を分担することもある。

システムエンジニア(SE)

要件定義・基本設計・詳細設計を中心に担当する。顧客の業務要件をヒアリングし、システムとしてどう実現するかを設計する、プロジェクトの中核的な職種である。

主な業務は以下の通り。

  • 顧客へのヒアリングと要件定義書の作成
  • 基本設計(画面設計、DB 設計、インターフェース設計)
  • 詳細設計書の作成
  • プログラマーへの設計内容の説明・フォロー
  • テスト計画の策定(結合テスト以降)
  • 障害分析と改修方針の決定

SE は技術力に加えて、顧客の業務を理解する力(業務知識)が重要となる。金融、製造、公共といった業界ごとに専門の SE がいることも多く、「金融 SE」「公共 SE」のように業界で区分されることもある。

プログラマー(PG)

SE が作成した詳細設計書に基づいて、プログラムの実装と単体テストを担当する。設計書をコードに変換し、意図した通りに動作することを確認する。

主な業務は以下の通り。

  • 詳細設計書に基づくコーディング
  • 単体テストの実施とエビデンス(証跡)の作成
  • コードレビューへの参加
  • バグの修正

SIer におけるプログラマーの業務は、Web 系企業のエンジニアと比べると裁量が限定的な場合がある。設計書に忠実な実装が求められ、独自の判断でアーキテクチャを変更することは基本的にない。ただし、技術力の高いプログラマーは設計段階から意見を求められることも多い。

インフラエンジニア

システムが動作するサーバー、ネットワーク、ミドルウェアなどのインフラ基盤を設計・構築・運用する。

主な業務は以下の通り。

  • サーバーの設計・構築(オンプレミス / クラウド)
  • ネットワーク設計(IP アドレス設計、ファイアウォール設定、ルーティング)
  • OS・ミドルウェアのインストールと設定(Web サーバー、AP サーバー、DB サーバー)
  • 監視設計と監視ツールの導入
  • パフォーマンスチューニング

近年はクラウド(AWS、Azure、GCP)の普及により、インフラエンジニアに求められるスキルセットが大きく変化している。従来の物理サーバーやネットワーク機器の知識に加えて、IaC(Infrastructure as Code)やコンテナ技術の知識が重要になっている。

テストエンジニア(QA)

システムの品質を保証するために、テスト計画の策定からテスト実施、不具合管理までを担当する。SIer では品質への要求が高いため、テスト専任の担当者を置くことが多い。

主な業務は以下の通り。

  • テスト計画書の作成(テスト観点、テスト手法、スケジュール)
  • テストケースの設計と作成
  • テストの実施とエビデンスの記録
  • 不具合の報告と管理(バグトラッキング)
  • テスト結果の分析と品質レポートの作成

SIer のプロジェクトでは、単体テスト・結合テスト・総合テスト(システムテスト)・ユーザー受入テスト(UAT)という段階的なテストが行われる。QA はこの全体を俯瞰し、品質基準を満たしているかを判断する役割を担う。

運用・保守担当

システムのリリース後、安定稼働を維持するための監視・障害対応・改修を担当する。地味に見えるが、システムの価値を長期間にわたって維持する重要な役割である。

主な業務は以下の通り。

  • システムの稼働監視(サーバー、ネットワーク、アプリケーション)
  • 障害発生時の一次対応と原因調査
  • 定期的なメンテナンス(パッチ適用、バックアップ確認)
  • ユーザーからの問い合わせ対応
  • 小規模な機能改修やバグ修正
  • 運用手順書・障害対応マニュアルの整備

運用・保守は開発フェーズと比べて目立ちにくいが、SIer の売上の大きな部分を占めている。24 時間 365 日の監視体制が必要なシステムもあり、シフト勤務が発生することもある。

SIer での実態

新入社員の典型的なキャリアパス

SIer に新卒で入社した場合、以下のようなキャリアパスが一般的である。

入社1〜3年目        3〜7年目           7年目以降
┌──────────┐     ┌──────────┐     ┌──────────────┐
│   PG     │ ──→ │   SE     │ ──→ │   PM         │
│ 実装・    │     │ 設計・    │     │ プロジェクト  │
│ テスト    │     │ 要件定義  │     │ 管理         │
└──────────┘     └──────────┘     └──────────────┘
                       │
                       ├──→ インフラエンジニア(専門職)
                       │
                       ├──→ ITアーキテクト(技術専門職)
                       │
                       └──→ ITコンサルタント(上流特化)

最初の数年間はプログラマーとして実装やテストを経験し、システムの仕組みを理解する。その後、SE として設計や顧客対応を経験し、やがて PM としてプロジェクト全体を管理する立場になる、という流れが「PG → SE → PM」の典型的なキャリアパスである。

ただし、全員が PM を目指す必要はない。技術力を深めてインフラエンジニアやアーキテクトとして専門性を高める道や、業務知識を活かして IT コンサルタントに転身する道もある。近年は技術職としてのキャリアパス(スペシャリスト職)を制度として整備する企業も増えている。

職種間の連携

実際のプロジェクトでは、これらの職種がはっきりと分かれているとは限らない。小規模なプロジェクトでは SE がプログラミングも行うし、PM が SE を兼務することもある。逆に大規模プロジェクトでは、さらに細分化されたロール(DB スペシャリスト、セキュリティ担当、移行担当など)が設けられることもある。

まとめ

  • SIer の代表的な職種は PM、SE、PG、インフラエンジニア、テストエンジニア、運用・保守担当の 6 つ
  • PM はプロジェクト全体を管理し、SE は設計、PG は実装を主に担当する
  • インフラエンジニアはシステム基盤、テストエンジニアは品質保証、運用・保守担当はリリース後の安定稼働を担う
  • 新入社員の典型的なキャリアパスは「PG → SE → PM」だが、技術専門職の道もある
  • プロジェクト規模によって分業の粒度は変わり、小規模では兼務、大規模では細分化される